料理を盛ったときに美味しく見える器を
まちの中心から少し離れた大型商業施設近くのアトリエ。南向きの窓際に、ロクロが3台、そのうちの1台にすわり、手元の回転する粘土に集中している。これからどんな作品を生み出そうとしているのだろうか。
柳川さんが焼き物に興味をもったのは社会人になって3年目くらいのころ、東京で家具関係の仕事をしていた時だった。ひとつの作品をゼロから作り出すことに興味が沸き、知識もないまま会社を辞め、京都の陶芸の専門学校へ入校。一から焼き物を勉強した。卒業後は専門学校時代の恩師の紹介で、京都の鴨川の源流域に工房を構える村田森氏に弟子入りした。家族の応援もあってそれから3年半ほどして故郷の足利で独立、それがこのアトリエである。
柳川さんが生み出す皿や器は白磁に染付というのが特徴。作品を見て「品を感じる」という人が多い。柳川さんが心掛けているのは、日常使いできる器。汚れがつきづらく、そして耐久性にすぐれたもの。「料理を盛ったときに料理が引立ち、おいしく見えるような、そんな器を作っていきたい」という。柳川さんの思いに共感して使ってくれる飲食店も年ごとに増えてきているそうだ。
最近は、古いモノを見たり触れたりすると、その制作の過程が理解できるようになったという。「時には先人の作品の写しを作ったりすることもあります。決してマネではなく―」とも。
独立して12年、今は年に数回の個展や大きなクラフト関係のイベントに参加している。
そうすることで「全国のギャラリーや画廊、デパートさんとも取引できるようになりました。また多くの作家やお客様とも出会える。それが励みになる」そうだ。
今後については「今は特別なことは考えていない。まずはひとつひとつ、仕事をこなしていくことが一番」と話す。
その素材ならではの表現を追求しています
主な素材として使っているのは「アートクレイシルバー」という銀粘土。純銀の粉末と水とバインダー(結合材)から成る粘土状の銀素材だ。銀粘土を使った作品づくりを続けて25年以上になる緑川さんが作り出すアクセサリーは、その素材の特徴を生かした造形力とデザイン性の高さで老若男女から親しまれ、身に着ける人の個性を演出している。
美大を卒業して就職したのが銀粘土を開発し製造販売している会社だった。新しい素材である銀粘土を全国に普及するため、販売店での実演やサンプルづくり、講師の育成が緑川さんの主な仕事だった。「もともと大学では陶芸を専攻していたので、銀粘土という素材が性に合っていたのかもしれない。」粘土細工のようにイメージをすぐに形にでき、焼成→研磨することでピカピカと輝く硬い純銀の金属になるというその素材に緑川さん自身が惹かれていった。
父が亡くなったのを機に会社を辞め、2001年に帰郷。実家に戻っても銀粘土を使った作品づくりは続けたいと思っていたので、間もなく実家にアトリエを構え、作品づくりを始めた。最初のころは予備校時代の仲間たちのグループ展に参加して展示・販売を重ねてきたのだが、そのころは展示や梱包の仕方も、さらには値段の設定も分からず、手探り状態だったという。
そんな緑川さんの作品はカエルやハエ、トンボなど、身近な生きものをモチーフにしたリアルでマニアックなものから抽象的でシンプルな形態のものまで幅広い。いずれにしても作品からどこか生きものっぽさを感じるのは「いきもの好き」を明言する緑川さんから生み出されるものならではなのかもしれない。
独立以来ほぼ毎回出品している「銀粘土でつくるシルバーアクセサリーコンテスト国際展」では、これまでにグランプリを受賞(準グランプリや特別賞は複数回)しており、その技術とデザイン力は高く評価されている。「これからも、自分が納得できる作品づくりを続けていく」緑川さんである。
まずは、手に取って見てもらえるのがうれしい
昔は大抵の家庭で使われていた漆塗の食器、たとえばお椀や重箱、お盆など。最近では人びとの生活スタイルの変化にともない、台所での存在がうすくなってきている。それでも漆器が放つマット系の艶やシンプルな形に魅せられ、コレクションとしてではなく、日常使いの食器として求める人が多い。
埼玉県出身の窪田さんが工芸の世界を目指す切っ掛けとなったのは、グラフィックデザインを学んでいた大学生のときの講師の木漆家との出会いだった。デザインよりもモノづくりに関心が深くなっていた窪田さんは講師にそのことを伝えると、卒業と同時に弟子入りすることを許可してくれた。
群馬県藤岡市の山間の師の工房での最初の2年間は、木工の仕事が主、その後の2年間で塗を学んだ。初めは木地に生漆をすり込み、それが乾く前に拭き取る“拭き漆”という木地の木目を生かす手法。もうひとつの方法の“本塗り”は下地、中塗り、上塗りとあって、漆を10数回塗り重ねることによって黒や朱の鮮やかな色合いと深い艶が出てくる技法である。現在は後者を主としている。その4年間で“木と漆”の魅力と奥深さを改めて感じ今に至るという。
窪田さんが独立したのは4年後。群馬県の妙義山麓に最初の工房を構えた。それからほどなく、縁あって足利学校の近くに移転した。石畳通りに面した工房は表側をギャラリーとして改装、窪田さんの作品(お椀や皿、お盆など)や窪田さん夫妻が付き合いのあるクラフト作家の作品が並んでいる。
漆の魅力を窪田さんは「耐水性に優れていて、手に持つ肌触りも柔らか過ぎず硬過ぎない。長い間使っていると色や質感が変わってきて、さらに輝いてくる」という。加えて「軽いのに割れない」というのも魅力のひとつかもしれない。「これからも研鑽を積んで、より多くの方に楽しんでもらえるような作品を作っていきたい」と話す。